農業

家族経営の個人農家の行方

2020年3月11日

減ったのは”家族経営の個人農家”

まず、過去のデータから確認してみよう。

 農林水産省が2018年7月に発表した農業構造動態調査によると全国の農業を営んでいる(農産物を販売、出荷している)個人、組織数は合わせて122万500軒で、約10人に1人の割合で農家を営んでいることがわかる。前年に比べ3.0%減少してはいるものの、組織として営んでいる数は3万5,500軒で、前年に比べ1.7%増加し、また、農産物の生産を行う法人は2万2,700軒で、前年に比べ4.1%増加している。一概に農家はやめるべきとは言えないことがおわかりいただけるかと思う。

 たしかに農業を営む”家族経営の個人農家”の数は年々減っているものの、組織として農業に取り組む団体は増えているのだ。そこには今の日本の社会的な現象が影響していると言えるだろう。

進む高齢化

 少子高齢化時代に突入した日本。今後間違いなく流通量は少しずつ縮小する。そして農業従事者の平均年齢は70歳に近づこうとしている。上記した農業構造動態調査によると、農業従事者の60歳以上の割合は72.9%に上り、高齢化が顕著に進んでことがわかる。

  実際に親の農業を手伝う傍らで今後に漠然と不安を感じている人も多いのではないか?歳を重ねて体力の衰えで辞めざるをえない世代から、引き継ぐか否かを選択しなければならない世代は頭を抱えていることだろう。

 また、農業をやめる判断をするときは、農地として登録されている土地をその後どのように活用するかを考える必要がある。そしてもし活用できないのであれば、ひとつ注意しなければならない点、固定資産税のことも考えるべきだろう。

固定資産税は、土地や建物などを所有している限り毎年かかる税金で、3年に1度見直される「評価額」が基準となる。持っている土地が、何も建物が無い更地であれば、「評価額」がそのまま「課税標準額」になり、この「課税標準額」に標準税率の1.4%を掛けた金額が「固定資産税」となる。

 農地として登録されていれば課税標準額(固定資産の評価額に対して調整を加えた額)が一定額(土地の場合は30万円)を下回る場合には課税されないこと、それ以上の場合でも限界収益修正率をかけることで評価額を45%減らすことができることを考えれば、土地の買い手がいない限り、自分が農地を継続出来なくても誰かにそのまま利用して貰えることが理想ではないか。

データから読み解く組織経営の増加

 上記の高齢化、担い手の不足が深刻になるなかで、その環境に合わせた運営方法が増加している。

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自営の農業の労働者は減ってきているのに対して、組織として農業に従事する人数は増加していて、さらに49歳以下の人数も増加している。

 家族では担い手がいない…でも固定資産税や、代々受け継いできた土地は農地として継続させたい!という高齢化した農業従事者のニーズを取り入れ、その土地を法人や企業が借りて組織として運営する方法が増えてきている証拠だ。

 これからはこの組織運営で行う農業が拡大していく。その中で自営業の農家が生き残る為の選択肢は2つだと考える。

  1. 地域の農家同士でコミュニティを作成し、組織的に農業を営んでいく
  2. 個人で販売する販路を確立し、独立する

 1の根拠として下の表をご覧いただきたい。

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 H29とH30のデータだが、色付きの部分が法人組織経営で白い部分はそれ以外だ。地域によっては経営体の数が増加していること、全ての地域において法人組織経営体の数が横ばいまたは増加していること、東北や九州では法人組織経営を行っていない経営体が未だに数多く存在していることがわかる。

 現在は個人で営んでいて厳しい環境に置かれていても、自身が地域のリーダーとなり、コミュニティを作成し組織を作り上げることが出来れば、規模の拡大につながり、より効率的な運営が出来るようになるだろう。

 下記のデータをご覧いただきたい。

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 売り上げ規模が100万円未満の経営体は減っているものの、100万円以上の経営体は全て増加している。収益がプラスになっている経営体というわけではないので一概には言えないが、労働力、農機具をシェア出来るというだけでも十分だと思うが、そこに金銭的な力も加わり、先進技術を取り入れたり、効率の良い農機具を使用することによって生産性は高まり、安定性も向上し、販売力の向上に直結しているのだろう。

 ゆえにこれを作り上げられれば今後も継続して農業を営むことができるだろう。

2について

 上記の組織に対抗しようとすると個人農家ではなかなか共存することは難しいだろう。だがそれは現状の運営を続けていくならの話。個人農家の農産物の取引先は主に農協や卸市場等が主である。

 農協に支えられて、何とか農業を営んでいて、黒字を継続出来ている。そんな農家はいないとは言えないが、一握りではないだろうか。多くの農家は農協から融資を受け、農機具を購入し、指定の農機具、肥料、農薬を購入し、農産物を納品することで、その購入代金を支払い、その残りから人件費等のランニングコストを差し引いて、ようやく利益となっている。

 個人的な考えではあるが、農業を新たに始めたい!という方にとっては様々な指導もうけられ、融資も受けられ、農産物も買ってもらえるというメリットは存在すると思うが、何年も何十年も農業に携わってきた方にとっては足かせにしかならないのではと考える。

 誰の為の農産物か。消費者の為であるはずだ。決して農協の為にではない。

 知識も技術も長年培ってきたものが個人農家にはすでに存在する。ただそれを消費者に届ける仕組み、販路がないだけだ。農協を挟むことによって安定した販売は行うことはできるかもしれないが、それを続けてきた結果が今日の現状であることを考えれば、これを今後も続けていくべきではないと判断することは難しいことではない。個人的には生命保険と同じようなイメージを抱いている。

 農協という団体は、組織である以上赤字の経営では成り立たない。では、どこから収益を得ているのか。それは農協を利用する農家である。もし農協が営利目的でなく、農家をサポートするためだけに存在するのであれば、国から公的な資金を得た上で、農家にとって最善の案内をし続けていることだろう。でも実際はどうだろうか。様々な制約があるのではないか。それはやはり、企業として利益を得る為であり、その利益にあなたの農産物の売上金や、あなたが購入した資材、農薬、肥料、農機具、融資されたお金の金利で利用者が農協を支えていることの証明になるだろう。

 だからこそ、農協に農産物を購入してもらうのではなく、自身で販路をもつことが重要になってくる。欲をいえば、個人農家だからこそできる自分が生産した農産物のアピールや、独自に取り組んでいることの宣伝を行うことで、固定客を獲得することが一番だ。そうすれば、販売価格は自由に決めることもできるし、農協の指定のものよりも安くて同等の効果がある代用品で対応することもでき、結果として農協に購入してもらった時よりも多くの利益を得ることができるようになり、農業も継続できるようになると考える。

結論

 農業はやめるべきとは言えない!今後も技術は進化し続ける。少子高齢化で減ってしまう労働力は新たな技術と仕組みで十分にカバーできるはず!

 

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